第49回JAUSワークショップ開催報告
- By: ワークショップ担当
- カテゴリー: JAUSワークショップ
第49回JAUSワークショップ「ダイバーと水中考古学 〜研究者はダイバーに何を求めるのか〜」開催報告
2024年6月5日(水)19:00~、スピーカーに水中考古学者の林原利明さんを招き、「ダイバーと水中考古学 〜研究者はダイバーに何を求めるのか〜」をテーマにオンラインのワークショップを開催しました。
林原さんは民間の考古学研究所に勤めるかたわら、水中考古学研究に取り組み、東京海洋大学の教壇にも立っています。
一般に水中考古学は、金銀財宝を積んだ沈没船を探すトレジャーハンティングや、海面下に没した伝説の大陸を探すものと思われています。林原さんも以前はそんなイメージを持っていたそうですが、1995年に長崎県鷹島海底遺跡の調査に参加した際に、陸の考古学調査と同様の学術に裏付けされた調査が行われているのを知り、水中考古学研究の世界に入っていきました。
ワークショップでは林原さんがこれまで関わった水中遺跡の数々が紹介されました。ダイビングポイントにもなっている小田原市石橋付近は、江戸城を作る際に山から石を切り出した場所があり、船に積載するときに落としたのか、石材が点々と沈むエリアがあります。そのほか伊豆半島の海岸には、各所に矢穴石(切り出す際の跡が残る石)が見られます。
初島沖の沈没船の周囲には、葵のご紋の入った鬼瓦やたくさんの瓦が沈んでいます。徳川家がオーダーした可能性が高く、一緒に沈んでいるすり鉢は江戸時代前期に作られたものなので、その時代のものと推察されています。
水中遺跡の特徴は、陸と違い有機物のものが腐らずに残りやすいこと、沈没船などはタイムカプセルのようにその時代のものだけがパックされていることが挙げられます。
水中遺跡や遺物の情報は漁業者やダイバーなど、海を知る人からもたらされます。私たちダイバーが潜るエリアにもまだまだ眠っているかもしれません。発見するには、何が水中遺跡や遺物なのか把握しておくことが大切です。知るためには文化庁による「水中遺跡ガイドブック」が役立ちますのでご覧ください。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/pdf/93679701_01.pdf
研究者としてダイバーに求めるのは、水中遺跡や遺物を見つける目を養ってほしということと、「これは」と思うものがあったら写真や発見したときの情報を提供してほしいということです。
ワークショップの様子はYouTube JAUS-TVでご覧になれます。以下URLからご視聴ください。
https://www.youtube.com/watch?v=kKXeUhAKuC4