第46回JAUSワークショップ開催報告

正会員・藤永嵩秋

2023年10月9日(月)に「人類の未来を担う”宇宙海洋”とは」をテーマに、第46回JAUSワークショップをオンラインで開催しました。スピーカーの山敷庸亮教授(京都大学SIC有人宇宙学研究センター)は、宇宙空間で持続可能な人類社会を築いていくために、建築学・法学・海洋学・森林学・農学・航空・医学等あらゆる学問が集結・共同執筆して仕上がった新しい学問書籍「有人宇宙学-宇宙移住のための3つのコアコンセプト」の著者の一人であり、ワークショップではダイバーに最も興味深い“宇宙海洋”の重要性についてお話しいただきました。

人が宇宙で持続的に繁栄していくためには地球の生きた自然資源(バイオーム)、とりわけ中核にあたる自然資源(コアバイオーム複合体)が必要不可欠となります。けれども、地球規模で初めて成立しているものを宇宙に持っていくことは現実的ではありません。そこで、必要最低限で実現性のあるバイオームを抽出し(選定コアバイオーム)、それを宇宙空間で展開するために基幹技術(コアテクノロジー)と社会システム(コアソサイエティ)を開発・統合することで人類の宇宙生活圏の確立を目指すことを提唱し、有人宇宙学を学問として体系化されました。

地球の海洋を他惑星(月や火星など)で具現化することは厳しいため、沿岸域を中心とした選定コアバイオームの実現をアリゾナ大学のBiosphere2で行われている閉鎖環境を意識した生態系研究と連携して目指されています。

山敷教授は「宇宙海洋の実現には、大量の水が必要であること、圧力変化よる液体沸点の低下、養殖できる魚の種類が現状限られていること等、実現に向けた課題は山積していますが、海の恩恵で生きている人類は宇宙海洋なくして持続的な繁栄は厳しい」と話されていました。

ご自身もダイビングをされる上級者ダイバーで、静岡県の神子元島でハンマーヘッドシャークの群れと一緒に泳いだり、沖縄県の西表島にもよく行かれたりする山敷教授は、「水中にいる感覚は宇宙空間を連想させるだけでなく、共通点が多い」と力説されていました。また、減圧症の考え方や中性浮力と微小重力の類似性、生命維持装置に依存していること等、ダイビングと宇宙は物理的距離が離れていても通じる要素が豊富にあるそうです。

人が宇宙圏で活躍していく時代は目の前に迫っているかもしれません。その時、宇宙海洋とダイビングが重要なカギを握っていることは間違いなさそうです。

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